シャフト豆知識


第23話 カーボンシャフトの素材(1)

カーボンシャフトに使われる代表的な素材はFRP(Fiber Reinforced Plastic)。この材料はプラスチックを繊維で強化した複合材のことで、ガラス繊維を強化材に使ったものはGFRP、炭素繊維(カーボン繊維)で強化したものをCFRPという。従ってカーボンシャフトはCFRPで出来ていると言える。炭素繊維は単体では非常によい材料になっているので複合材にしないで使えばよさそうに思えるが、この材料の欠点は伸びがなく脆いという事。太い棒を曲げると棒の中心は伸縮しないが、外側は伸び、内側は縮む。伸びのない材料は伸縮の限界を超えて破壊してしまう。しかし細い棒ではどうだろうか? 中心からの距離が短く伸縮の程度が少ないので折れにくいことになる。そこでこの様な繊維で棒状の物を作るには、これらの繊維をプラスチックで固める方法がある。この固める材料をマトリックス材といい、ゴルフシャフト用には通常エポキシ樹脂という熱硬化性のプラスチックが使われている。マトリックス材はプラスチックだけでなく金属もありこの場合はFRM(Fiber Reinforced Metal)と呼ぶ。


第24話 カーボンシャフトの素材(2)

炭素繊維はその原料の種類によって分類できる。まずポリアクリルニトリル樹脂を基に製造したものはPAN系炭素繊維と呼ばれている。次に石油化学や石炭化学の残滓であるピッチを基に製造したものはピッチ系炭素繊維をいう。
PAN系の炭素繊維の製造方法は、まず原料樹脂のアクリルニトリル樹脂を重合、紡糸してPAN繊維を作る。PAN繊維そのものはポリエステルなどの繊維と同様に加熱すると溶けてしまうが、酸素を吹き込みながら200~300℃で酸化反応を行うと、熱で溶けない安定化繊維へと変化する。安定化繊維を更に高温で熱すると、炭素以外の成分が、NH3、CH4、H2等のガスの形で除かれて炭素同士が結合して炭素繊維(carbon fiber)になる。炭素繊維を2000℃以上で熱処理すると黒鉛結晶が発達して黒鉛繊維(graphite fiber)に変化する。現在は炭素繊維と黒鉛繊維を特に分類せず炭素繊維の呼称となっている。PAN系炭素繊維は黒鉛化が進むほど弾性率が高くなる性質がある。
ピッチ系の製造方法は、まずコールタール状のピッチの熱処理、濾過、水素化等の工程を経て紡糸に適した液晶上のメソフェーズピッチに調整する。これを紡糸してPAN系の場合と同じく空気中で200~300℃に加熱した後、高温に過熱して炭化、黒鉛化を進めると炭素繊維が得られる。
このようにして出来た連続繊維は、PAN系で直径約7μmm、ピッチ系で約10μmmの単繊維を数千本束ねたヤーンの形で供給される。メーカーのカタログに「3K」とあるのは、繊維の3,000本を一束にしたものという意味で、12,000本なら「12K」となる。
炭素繊維の特性は、製造方法や加熱条件によって異なるが引っ張り強さは300~800kgf/mm2、弾性率は24~80tf/mm2、比重は1.75~2.15とかなりの範囲になる。最も多く使われているものには引っ張り強さ300kgf/mm2で弾性率24tf/mm2があるが、シャフトの機能、目的によっては引っ張り強度700kgf/mm2の高強度のものを使ったり、弾性率70kgf/mm2の高弾性繊維を使う。メーカーのカタログ等にHM40とかHM70と出ているものを見かけるが、High Young Modulus40tf/mm2、70tf/mm2のことを意味している。


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