だったらくっつけちゃったら?
― N.S.PRO MODUS3 HYBRID誕生秘話

日本シャフトが誇るツアーブランド『N.S.PRO MODUS3シリーズ』活躍の立役者。

ツアーレップの「リー・オイヤー」。


タイトルにある、彼が放ったその一言は、日本シャフトの頭脳である開発チームの〝魂〟に、静かに火をともしました。


ある日突然、「リー・オイヤー」から一本の電話。


〝ちょっと話があるから日本に行くわ〟


N.S.PRO MODUS3シリーズ』は、USPGAツアープレイヤーからのフィードバックを受けて開発される、アイアン/ウェッジ用スチールシャフトのシリーズ。

彼から届く毎試合のレポートや選手からのフィードバックを基に様々な試作品を開発し、それをアメリカに送り、テストを受ける。


そう。それまでは、年に数回こちらから現地視察を兼ねて打合せに行く以外は、全てメールや電話でのやり取りで済んでいたのです。


それが、『リーが日本に来るってよ!』


とんでもない大ネタに違いない・・・。


すぐさま関係者に召集をかけるプロジェクトリーダーであるN.O常務。


今であれば絶対にやってはいけない3つの密。


狭い会議室に10名以上が結集し、まさに膝と膝を突き合わせての会議が始まりました。




横浜にある日本シャフト本社の狭い会議室で、N.S.PRO MODUS3 HYBRID Graphite On Steel Technology』の開発の火ぶたが切られた瞬間でした。




『リー・オイヤー』曰く、〝USPGAツアーの選手たちの多くがユーティリティやハイブリッドのシャフト選びに困っている。君たちの技術で彼らが満足できるシャフトを作れないだろうか〟


そのリクエストを届けるために、わざわざ遥か日本まで単身乗り込んできたリー。

日本シャフトの仕事をするようになってから来るようになった日本。
今でこそSuicaを持つまでに日本に慣れましたが、日本語は全く話せません。

その彼が単身日本に飛んできたのですから、断る理由はありません。


ただ・・・彼のリクエストはいつも開発陣の頭を悩ませる高度なものばかり・・・


そのおかげで今の『N.S.PRO MODUS3シリーズ』があると言っても過言ではありませんし、当時から開発を担当している開発担当者もかなり血の気が多い方・・・。


おれが無理って言ったら終わるんで



それが開発担当者の口ぐせ。うん、実に頼もしい。



リーからのリクエストは、カーボンシャフトのようなシャフトの硬さや軽さを持つシャフトが必要。ただし、カーボンシャフト単体ではスピンレスになり過ぎるので、NG。



というものでした。


議論を始めて何時間が経過したでしょう。


そこでリーが放ったひと言は、私たちに衝撃を与えるものでした。
それと同時に、日本シャフトの頭脳の〝開発魂〟に、静かに、でも確かに火をともしました。


それぞれメリットもデメリットもある。でもお互いに単体では作れないんだろう?
だったらくっつけちゃったら?



ハイブリッドという言葉は、「2つの異なる種類のものが組み合わさって出来上がる新種」という意味があります。


車や、それこそゴルフクラブにもハイブリッドがあり、言葉としては一般的になってきています。

要は、それをシャフトでやってしまおうということ。

ちなみにハイブリッドの対義語は〝サラブレッド〟。


スチールのサラブレッドである『N.S.PRO MODUS3シリーズ』に、日本シャフトが総合シャフトメーカーとして培ったカーボンシャフトのテクノロジーをハイブリッド。


これが今回のミッションです。


とはいえ、単純に接着剤で接着すれば良いというものでもありません。


まずは求めるシャフトの物性(スペックや特性などのこと)を確認。

そこにハイブリッドとしての強度やフィーリング面などシャフトとして求められる要素を掛け合わせて、スチールシャフト部分とカーボンシャフト部分との比率を試算。

スチールシャフトとカーボンシャフトと、どちらで物性を出すのかを決める。

それぞれのシャフトの設計に進むだけでも気の遠くなるようなシミュレーションを重ねます。


どうにか形になった。



硬過ぎて地を這うような弾道しか出ない・・・・・。


筆者、ドライバーのヘッドスピードはおよそ45~46m/sですが、そのヘッドスピードでは全く歯が立たない。


もう少しヘッドスピードの速い競技ゴルファーが打つと、パフォーマンスは悪くないが正直そこまでの優位性を感じない。


試打と試作を繰り返し、シャフト本体のベースは完成。

ここまで既に60g台のスチールシャフトを作る技術もある日本シャフトですから、形にすることそのものは、開発陣にとってみれば造作もないこと。


問題は、スチールシャフトとカーボンシャフトとの接着。


ただ接着をするだけであれば、簡単。

しかし、モノはゴルフシャフト。

ハイブリッドクラブであればおよそ40インチの全長にわたってしなる。さらに、偏平も復元も起きる。ねじれも生じる。

弾性率の異なる異素材を密着させることには、シャフト本体の試作よりもはるかに困難なことです。


様々な接着方法をテストし、強度が保てるものはフィーリングテストへと回る。


例え強度が保てても、打ってみてフィーリングが悪ければ容赦なくボツ。

せっかく開発陣が形にしてくれたものだから、テストを出す側はOKを出したいに決まっています。

素材として売りやすそうなものを使っていたら、多少フィーリングや性能に抜きんでるものがなかったとしても、それの方が売りやすいかも。
そんな風に思うことも、なくはない。


でも、作り手の都合でモノを作ったらおしまい。


使い手の気持ちに寄り添って、その想いや願いを満たせるかどうか。


その想いでテストをする。テスター個人の好き嫌いも排除して、使い手をイメージして一心に試打をする。

時には開発陣と喧嘩のようになることも。

テスターである我々にも、それ相応のスキルや真剣みが求められます。


ツアーレップから届くレポートに書いてある選手のフィードバック。

ゴルフクラブやゴルフシャフトのカタログに書いてあるセールストークやコンセプト。

有識者や社外テスターから届くコメント。


そこにある言葉にはどんな意味があるのか。
このコンセプトは打つとこんな感じになるのか。


そういったことを勉強して知識を蓄え、経験を積み重ねていくと次第に、

誰が、どんな想いを持ってゴルフをしているのか。
どんな気持ちでそのシャフトを打っているのか。


こういうことが考えられるようになってくる。

自信をもって作り上げたシャフトを、届けたいゴルファーと一体になる為に、作り手も売り手も、まさに真剣勝負。


いくつもの接着技術を採用した中からテストを行い、残った数種類の試作品で最終テストです。

最終テストに残った中にも、一発NGとなったものもあります。
強度面は◎。でもあまりにもフィーリングが悪すぎる。

残る試作品をようやくリー・オイヤーに届け、ここから実戦でのテストが始まります。

そうして、計画からおよそ1年遅れ、3年目でようやく納得のいくシャフトが完成。

それが、2019年10月25日に発売された『N.S.PRO MODUS3 HYBRID Graphite On Steel Technology』です。


シャフト特性は比較的素直な、『N.S.PRO MODUS3 TOUR105SYSTEM3 TOUR125』タイプ。

『105』と『125』をかけあわせて、発売日は10・25。


そんなところに込めた思いも含めて、一度お試し下さい。

では。⛳




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